住宅を購入するには、物件価格のほかに、「諸費用」と呼ばれる、登記費用や税金、住宅ローン手数料などの費用が追加で発生します。
諸費用の目安は、新築物件だと物件価格の3%〜7%、中古物件は5%〜10%程度となり、
3,000万円の住宅を購入した場合は90万円〜300万円程度と高額です。
諸費用を意識せずにいると、手続きをすすめていくうちに「資金が足りない!」といったことが起きる可能性もあります。この記事で大まかに費用を確認し、無理のない資金計画を組みましょう。
住宅の種類ごとの諸費用一覧
「一戸建てとマンション」「新築と中古」ごとの主な諸費用を一覧にまとめました。
諸費用の種類 | 新築一戸建て(注文・建売) | 中古一戸建て | 新築マンション | 中古マンション |
印紙税 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
登録免許税 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
司法書士報酬 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
固定資産税精算金 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
不動産取得税 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
修繕積立基金 | ✕ | ✕ | 〇 | ✕ |
仲介手数料 | △(売主が業者の場合は不要) | 〇 | △(売主が業者の場合は不要) | 〇 |
融資事務手数料 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
ローン保証料 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
火災保険料 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
諸費用の説明
諸費用の種類は大きく「住宅購入に関する費用」と「住宅ローンに関する費用」の2つに分けられます。それぞれの項目と費用について確認していきましょう。
印紙税
住宅の売主と締結する「売買/請負契約書」と、住宅ローンを組む際に金融機関と締結する「ローン契約書(金銭消費貸借契約書)」に貼る印紙に対して、それぞれ印紙代が発生します。印紙を貼ることで、それぞれの契約書は法的に有効な書類となり、将来的なトラブル防止にもつながります。
- 売買/請負契約書(不動産価格)
1,000万円超~5,000万円以下
→印紙代 1万円 ※軽減措置適用後
5,000万円超~1億円以下
→印紙代 3万円 ※軽減措置適用後
※軽減措置は2014年4月1日〜2027年3月31日に作成された契約書が対象です
- ローン契約書(借入金額)
1,000万円超~5,000万円以下
→印紙代 2万円
5,000万円超~1億円以下
→印紙代 6万円

「ローン契約書」より「売買/請負契約書」の印紙代の方が安いのは、住宅の流通を促す目的で、期間限定の軽減措置が適用されているためです。軽減措置は、以降に紹介する他の税金にも適用されています。
登録免許税
住宅の所有権などの登記、住宅ローンを組むときの抵当権を登記する際に発生します。
- 土地の所有権移転登記
→固定資産税評価額×1.5%
※軽減措置適用後:2026年3月31日までに登記を受けたものが対象 - (新築)建物の所有権保存登記
→固定資産税評価額×0.15%
※軽減措置適用後:2027年3月31日までに登記を受けたものが対象
※新築で長期優良住宅など高品質な住宅の場合は、住宅の登録免許税が0.1%に引き下げられます - (中古)建物の所有権移転登記
→固定資産税評価額×0.3%
※軽減措置適用後:2027年3月31日までに登記を受けたものが対象 - 抵当権設定登記
→借入金額×0.1%
※軽減措置適用後:2027年3月31日までに登記を受けたものが対象
司法書士報酬
住宅の所有権の移転、保存登記、抵当権設定登記を行う司法書士に対して支払う費用です。
目安:約20万円〜
業務内容や登記の内容によって変動します
固定資産税精算金
不動産を取得すると「固定資産税」が毎年発生しますが、その請求先は、その年の1月1日にその不動産を所有していた人(法人)に請求されるため、年度の途中で不動産の所有者が変わった場合は、売主と買主で日割り清算を行います。
目安:固定資産税評価額×1.4% で算出された金額から日割り清算
不動産取得税
不動産取得税は「住宅購入に関する費用」として発生する一度きりの税金です。
税額は次のとおり計算されます。
- 住宅用の建物:固定資産税評価額×3%
- 住宅用の土地:固定資産税評価額×3%
ただし、住宅用の不動産取得税には控除や軽減措置が適用され、結果的に課税されない(0円になる)ケースも多くあります。
課税される場合でも、納税通知書が届くのは入居から半年〜1年後が一般的です。資金計画を立てる際は、このタイムラグも見込んで準備しておきましょう。
修繕積立基金
修繕積立基金は、新築マンションを購入する際に一度だけ支払う費用です。将来の大規模修繕工事に備え徴収されます。
なお、購入時に基金を支払った後は、「修繕積立金」を毎月支払う仕組みになっています。 修繕積立基金と言葉は似ていますが、この「修繕積立金」は、新築・中古を問わず、マンションの所有者に毎月発生する費用です。中古マンションの購入者も、引き渡し後から支払う必要があります。
- 修繕積立基金:数十万円単位
→新築マンション購入時に1度だけ発生 - 修繕積立金:毎月数千円~数万円程度
→新築・中古マンション購入者ともに発生
仲介手数料
仲介会社を通して物件を購入する場合に支払う手数料です。一方で、注文住宅や建売住宅の売主から直接購入する場合は不要です。
物件価格×3%+6万円+消費税(上限)

ここからは、住宅ローンを利用する場合に発生する費用についてご案内します。
特に「融資事務手数料」と「保証料」は高額になるケースがあるため、数多くある諸費用のなかでも、早めに概算を確認するとよいでしょう。
融資事務手数料
住宅ローンの契約時に、金融機関へ支払う手数料です。金融機関によって金額の算出方法が異なり、一般的には次の2つの方式があります。
- 定額型:一律 3万円〜5万円程度
→初期費用を抑えやすい反面、金利はやや高めに設定されるケースが多い - 定率型:借入金額の1〜3%程度
(例:借入金額3,000万円×3%=90万円)
→初期費用は大きくなるものの、その分金利が低めに設定され、長期的には総返済額を抑えられる場合がある
「手元資金を残すなら定額型」「総返済額を抑えるなら定率型」というように、ライフプランに合わせてプランが選べます。
ローン保証料
住宅ローンの保証会社へ支払う費用です。保証料を支払うことで、借主が返済を延滞した場合、保証会社が金融機関へ立て替え払いをしてくれます。支払方法は、借入時にまとめて支払う方法と毎月の返済額に保証料を含める方法などがあります。
なお、フラット35など一部の商品では保証料が不要な場合もあります。
目安:借入金額の0.2〜2.5%程度
火災保険料(地震保険料)
住宅ローンを利用する場合は、火災保険の加入が融資条件となるのが一般的です。
保険料は、保険会社や補償内容の範囲(家財の補償・地震保険など)によって大きく変動します。
なお、地震保険は火災保険に付帯して契約する保険のため、地震保険単独での加入はできません。
目安:数万円~数十万円(5年契約一括払いの場合)

ここまで諸費用の種類を確認してきました。
「思ったより多いな…」と感じた方もいるかもしれませんね。
ここからは、そんな諸費用を少しでも抑えるための工夫をご紹介します。
諸費用を抑える方法
諸費用は種類が多く高額なものもありますが、工夫をすることで抑えることができます。
- 売主との直接契約で仲介手数料を節約
新築住宅には「売主から直接購入するケース」と「仲介会社を通すケース」があります。売主から直接購入なら仲介手数料が不要となり、諸費用を抑えられます。ただし、仲介会社から紹介を受けた後に直接契約へ切り替えるのはトラブルの原因となるため、最初から直販物件を探すのが現実的です。
- 火災保険を複数社で比較する
火災保険は売主などから紹介される商品だけでなく、自分で選ぶことも可能です。一括見積サイトなどを利用して複数社を比較することで、数万円単位の削減につながることがあります。
- 火災保険料の一括払い
火災保険料は、契約期間を長く設定するほど割引率が適用されるのが一般的です。5年で一括契約を選択すれば初期費用は大きくなりますが、長期的な支出を軽減できる有効な方法といえるでしょう。
諸費用分を住宅ローンに組み込むことができる
諸費用は基本的に現金払いですが、金融機関によっては「オーバーローン」で住宅価格と一緒に借入できる場合があります。
現金の持ち出しを抑えられる反面、全体的な返済金額が増えるとともに、金利が高くなる可能性もあるため、利用を検討する際は必ず金融機関に確認しましょう。
一部の諸費用は売主が代理で支払うことも
住宅ローンの融資金は、①買主の口座に一度振り込まれた後に売主へ支払う方法と、②融資金が直接売主の口座に振り込まれる「代理受領」という方法があります。
代理受領の場合、オーバーローンの利用や手付金の額によって物件価格を上回る資金が発生すると、諸費用の一部を売主が代わりに支払うことがあります。
これにより、司法書士や金融機関、売主に対するそれぞれの支払いを買主自身で行う必要がなくなり、事務負担を軽減できます。
売主が代理で支払う対象となるのは、主に以下の費用です。
- 登録免許税
- 司法書士報酬
- 固定資産税精算金
- 住宅ローン契約書の印紙税
- 融資事務手数料
- ローン保証料
まとめ
住宅購入時に必要となる諸費用は、物件の種類(新築・中古/一戸建て・マンション)、購入形態(売主との直接契約か仲介経由か)、さらに住宅ローンの利用条件などによって大きく変動します。まずは「ご自身がどのケースに該当するのか」を正確に把握することが重要です。
特に、住宅ローンを利用する場合は、融資手数料や保証料が高額となるため、購入の検討段階から、売主や金融機関へ概算の費用を見積もりをしてもらうとよいでしょう。
今回ご紹介した諸費用だけでなく、引っ越し費用や、家具・家電の購入費用、注文住宅の場合は地鎮祭など、入居後に必要となる出費も見込んでおく必要があります。トータルコストを意識し、見積もり段階で、節約可能な部分をあらかじめ確認しておきましょう。

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