「全財産を妻に渡す」と遺言書に書いたはずなのに…
父が他界した際、私たち家族はすでに公正証書遺言を作成していました。
公証人の立ち会いのもと、父の明確な意思として「全財産を妻(私の母)に渡す」と記載された正式な遺言書です。
正直なところ、「これで財産分与に関するトラブルは起きない」と、家族みんなが思っていました。
しかし――
生命保険の請求手続きの段階で、思いもよらない事態が起こりました。
遺言書があるのに…生命保険は“法定相続分”で分けられた
生命保険の受取手続きを進めていたところ、保険会社からこう言われました。
「この契約は、受取人欄が『法定相続人』となっています。
遺言書の内容にかかわらず、相続人全員の署名が必要です。」
私たちは驚きました。
父の「妻に全財産を」と書かれた遺言があるにもかかわらず、生命保険ではその内容がまったく反映されないというのです。
理由はこうでした:
- 生命保険は契約上の指定が最優先される
- 受取人を「法定相続人」としていた場合、保険会社は民法上の持ち分に従って手続きする
- 遺言書に記載があっても、受取人の署名がなければ一人にまとめて支払うことはできない
つまり、保険申込書に受取人として明確に「妻の氏名」が記載されておらず、署名もない限り、遺言は意味を持たないということです。
教訓:遺言書は無敵じゃない。保険とセットで確認を!
今回の件を通じて、私たち家族が学んだのは以下のことです:
✅ 遺言書があっても、生命保険には効力が及ばないことがある
生命保険は**「契約行為」**なので、法律よりも契約書の内容が優先されます。
遺言書があっても、「受取人」が法定相続人となっていれば、他の相続人の協力がなければ手続きが進まないケースがあるのです。
✅ 受取人指定が重要。直筆署名の有無も要確認
受取人欄は必ず個別の氏名で指定し、署名もしてもらうこと。
「配偶者」や「法定相続人」と曖昧にしておくと、遺産分割協議が必要になり、スムーズに受け取れません。
✅ 生前に保険契約を整理しておくのが理想
保険契約が複数ある場合は、被保険者が元気なうちに加入保険をリストアップし、
・誰が受取人になっているか
・その人と連絡が取れるか
をチェックしておくことをおすすめします。
受取人が遠方や疎遠で連絡が取れないような場合は、生前のうちに受取人を変更するのも選択肢です。
まとめ
遺言書はとても大切ですが、「万能」ではありません。
特に生命保険は契約の性質上、遺言の効力外となることもあるというのは、私たちが実際に経験した教訓です。
大切な人に「確実に」財産を渡したいなら、遺言+保険の契約内容の確認をセットで行ってください。
将来のトラブルを未然に防ぐためにも、ぜひこの点を意識してみてくださいね。

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